« 2009年03月13日 | Top2009年03月15日 »

最新記事【2009年03月14日】

うつ病の入院治療にあっては,【休養】が第一の目的とされていますので,逆にいえば,患者さんにとっては「暇で仕方がない」という事態に陥ることもあるそうです。食事・読書・テレビ観賞・喫煙で一日を費やすことになりますので,却って「こんなことをしていいのだろうか?」という不安感を抱くケースがよくあるようです。納得のいく医師の説明が求められるところでもあります。

また,他のうつ病患者さんとの交流は,人によっては苦痛になる場合も考えられます。いずれにせよ,うつ病発症の原因に応じて,入院の是非が綿密に検討されなければなりませんね。

さらに,気をつけておかなければならないのは,先の【通院医療費公費負担制度】をみていただければお分かりになるとおり,「入院」にたいしては,公的扶助はありません。したがって,医療費がかさむことになるのです。この点は,社会的ケアの改善が求められるところでもありますが,現状においては,激務からうつ病を発症し,ほんとうに休息をじっくりととらなければならないという患者さんに適したものであるということができるでしょうか。

もちろん,病院やクリニックに応じて,うつ病の入院治療の方法は千差万別です。入院治療に関心のある方は,インターネットを駆使して,自らの症状とスケジュールに適したサービスを探していただくのが一番です。加えて,独りよがりにならずに,専門家に入院の是非を問うことが大切です。

以上,うつ病を巡る医療・社会制度について節を進めてまいりました。前節までと比べると,本節の内容と分量に遜色があることは否めません。しかしながら,逆にいえば,かような医療・社会制度は,これから整備される段階にあるということが理由となっているのです。是非とも,うつ病の社会的ケアが拡充することを願ってやみません。この社会的ケアの拡充の原動力となるのは,うつ病に対する【社会的認識の改善】といっても過言ではないでしょう。次節を最終節として,うつ病を巡る社会的認知の動向を歴史的に探ることとしましょう。

うつ病で入院治療を受ける,となった場合の概要についてもみていきましょう。うつ病治療に不可欠なのは【休養】であるということについては,前節で繰り返しお伝えしたとおりです。

ですから,うつ病の入院治療のメリットは,じっくりと安息をとることができるという点にあります。病院側も【休養】を念頭に置いた環境を用意しているので,仕事・勉学・家事・育児といった作業からは完全に解放された生活を送ることができるのです。また,お医者さんと日常に接することができるので,正確な情報を適宜入手することが可能となります。また,同じく入院している他の患者さんとの情報の交換が期待できます。うまくコミュニケーションがとれれば,うつ病の早期回復に大変有利に作用する環境が整えられているというわけです。

また,過度の自殺願望・計画に駆られている患者さんは,常に「監視」の目が行き届きますので,家の片隅に閉じこもって家族には様子を窺うことができないというリスクは解消されることになります。

ただし,このようなうつ病の入院治療がもつ長所は,それがもつ短所と表裏一体の関係にもあります。次項にみてまいりましょう。

さらに気になるのは,うつ病と保険制度との関係です。「うつ病だと生命保険に加入できない」といったことがあるようです。結論からいうと,保険会社によりにけりなのですし,精神疾患が審査において不利に働くことがあるのも事実ですが,本項において,個々の保険会社の適用如何を調べ上げることには,限界があります。また,インターネットでも多くの情報が蓄積されていますので,是非ご覧になって頂きたく存じます。

いずれにせよ,保険をはじめとするうつ病の社会的ケアについても,専門医であれば熟知されているものです。うつ病の治療にあたっては,お医者さんとのコミュニケーションのなかで,治療自体の打ち合わせだけでなく,治療中・後の身の振り方などについても相談をもちかけるのが何よりです。

一方,働く人々にとって重要なのは,【雇用保険】です。【雇用保険法】についてその詳細をここで議論することはできませんが,うつ病を患って失業した一般被保険者は,【基本手当】支給の対象条件のうち,「労働の意思及び能力を有するにもかかわらず職業に就くことができない状態にあること」に,引っかかる可能性が十分にあります。ここで,【就職困難者】の基準を満たすことができれば,【基本手当】の給付日数を延長することができるのです。【就職困難者】の定義の一つとして,【雇用保険法】が設けているのが,【障害者雇用促進法第二条第四号による精神障害者】という枠組みです。ここから【精神障害者】の定義を【障害者雇用促進法】に遡って行くと,相当の紙幅を要することになりますので,割愛しますが,いずれにせよ,心身ともに就労が可能な状態に回復していれば,【就職困難者】として認められるケースがあります。こちらについては,【ハローワーク】が的確な情報を提供してくれますので,是非お問い合わせになってください。

うつ病…怖くない病気です

[はじめに]

この度は,【うつ病】をテーマにお話をします。みなさまは,【うつ病】,と聞いてどのようなイメージを抱かれるでしょうか。何か奇異なもの,延いては社会生活にそぐわないものとお考えの方も多いのではないでしょうか。確かに一昔前までは,「うつ病」は,医学的言説においてさえ非常にネガティブな,扱いにくく,確固たる「輪郭」をもたないものとされてきました。「うつ病は治らない」,であるとか「怠惰」など「個人の資質に帰せられる」といった言説が,医師の側からも発せられていたのは事実です。逆にいえば,このように社会全体が「うつ病」に「神秘性」を付与したことは,患者さん自らが「うつ病」を逆手にとり,自身を「特別な心の弱者」として,殻に閉じ込もってしまうような事態をも引き起こしていたといって過言ではないでしょう。

今この現在において,即ち本稿で問題とされるうつ病は,一昔前の「うつ病」とは異なるもの,延いては名称を変えたほうがよいもの,と筆者は考えます。というのは,普段の社会生活を営むうえで,誰しもが避けられない,「心と体の総合的な失調」が件のうつ病だからです。「うつ病は心の風邪」ともいわれますが,うつ病は,誰もが発症する可能性を秘め,また処置の仕様が確立されている病気なのです。今や,このうつ病は,医学の領域において事細かに「輪郭」が与えられている一途にあります。その一方で,社会的なケアという面では,制度的な枠組みが未だ整っていないというのが現状です。この社会的な受け皿を構築するにあたって必要とされるのは,何よりもまず,うつ病に対する社会的認識の改善です。このことを切に感じ,筆を執った次第です。

本文では,具体的にまず第I節で,うつ病発症の契機となりうるような症状の事例を挙げてまいります。続く第II節では,第I節の事例に即して,医学的に定義されたうつ病の「輪郭」を明示します。近年耳にする「うつ病は治る」という言説はいささか誤謬はあるものの,風邪から糖尿病などにいたるまでの病気と同じように,要は病状の程度に応じて処置の難易如何があるということが明らかになるでしょう。第III節では,実際の治療にあたって,診断から治癒までの経過を,患者さん及び,周囲の方々への注意点とともに整理します。第IV節で問題となるのは,うつ病を巡る医療・社会制度の実態です。家族のために,大切な人のために,うつ病患者さんが積極的に医療を受けることができるような受け皿の拡充が,今後の課題として立ち現れてくるでしょう。この課題を達成するうえで不可欠なのは,何よりも社会全体がうつ病に対して無知であってはならないということです。そこで第V節では,うつ病の社会的認知の促進に向けて,同病(に対する認識)の歴史的背景を探ることとします。

なお,【強迫性障害】は,うつ病とは異なる病気です。こちらについても,うつ病と同様の社会的な対応が迫られている領域ですが,本稿で扱うには紙幅の限界がありますので,言及するには至りません。ただし,今やインターネット上でも多くの情報が蓄積されていますので,是非ご覧頂きたいと思います。