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最新記事【2009年03月11日】

【薬物療法】と医師との【コミュニケーション】の他にもうつ病を改善にもっていくために大切なのは,患者さんご本人による【日常的なケア】です。

何よりもまず最初に挙げるべきは,【休養】です。ゆっくりと体と心を落ち着けて,抗うつ剤が適格に効果を発揮する環境を整えてやることです。しかしながら,仕事・家事・育児・勉学との兼ね合いで,長期的に休みをとることは叶わないのが実際のところであるといえます。コミュニケーションを通して,上司や同僚の理解を得ることが必要となるところです。ただし,会社環境によっては,未だうつ病に対してよくないイメージが抱かれているのも現状です。社会全体が,うつ病の認識転換に向けて改善されなければならないのも事実です。ですから,会社での了解を取り付けるのに難を要した場合には,独りで窮せず,まずは担当のお医者さんに助言を仰ぐのが一番です。経験豊かな専門家であれば,必ず何かしらの糸口を見出してくれるはずです。

さて,【休養】の他にも,患者さんご本人が心掛けるべき【日常的なケア】がございます。項を改めましょう。

うつ病の薬物治療を施すうえで,欠かせないのは専門家,即ちお医者さんとのコミュニケーションです。とはいっても,うつ病をネガティブに捉え,精神科を何か恐ろしいところのようにイメージし,薬物療法以前に病院に行けない,という方も少なからぬいらっしゃるようです。ぜひともそのようなイメージは,一掃して頂きたいと考えています。

実際,精神科,心療内科,メンタルクリニックに訪れてみると,他の病院や科と何ら変わりないことがわかります。待合室や受付も同様,殊更とりたてて一般診療科との違いを表すようなものはありません。

また,他の診療科と同様,サービスや医師の能力は様々であるといえましょう。それゆえ,患者さんが色々と情報を集めて医師を「選択」することができるわけです。とくに経験豊かなお医者さんなら,患者さんに余計な不安を抱かせることなく,「和気藹々」と問診をしてくれることでしょう。逆にいえば,早期の治療のためには,患者さんご本人が,思い当たる節があれば,些細なことでも,また言いにくいことでも恥ずかしがらずに,全て専門家に情報を提供することが求められます。病気を治したいと考えているお医者さん自身も,そのような情報を必要としているのですから。このような点からも,良質のコミュニケーションが期待できるように,実績のある病院・クリニックを調べ,気軽に受診する必要があるといえましょう。

さて,正しく抗うつ剤を服用していざ治療を試みた場合,一般的にどのような経過をふまえることになるのでしょうか。

先に注意しておかなければならないのは,うつ病は直線的に,不可逆的に快方へ向かうものではないということです。比較的長期の治療期間には,症状が良くなったり悪くなったりが繰り返します。でも,全体として平均的には右肩上がりで快方に向かいます。医師の説明を聞きながら焦らずゆっくりと構える必要があります。

うつ病治療では,受診を経て,患者さんに適切な抗うつ剤が処方されます。まずは,おおよそ三ヵ月を目安に服用を続けます。この間に一定の効果が現われ,症状が改善されることがよくありますが,医師の判断のものとその後三か月から半年の間,処方時の薬剤を服用する措置がとられるのが一般的です。これを【持続療法】といいます。この【持続療法】の結果をみて初めて医師は,処方量を減らす措置を講じます。その後,引き続き三ヵ月から半年の間,処方されたお薬を服用し,治癒へと至るのが大雑把な薬物療法の経過となります。したがって,薬物療法に要する時間は一般的には,半年から一年,ということになります。「焦らずじっくり」が要される所以です。

この薬物治療の過程においては,やはり医師との弛まないコミュニケーション,患者さん本人の【日常的なケア】,家族や親しい間柄にある人による【サポート】が求められてきます。その辺りを次項以降においてみていきましょう。

うつ病…怖くない病気です

[はじめに]

この度は,【うつ病】をテーマにお話をします。みなさまは,【うつ病】,と聞いてどのようなイメージを抱かれるでしょうか。何か奇異なもの,延いては社会生活にそぐわないものとお考えの方も多いのではないでしょうか。確かに一昔前までは,「うつ病」は,医学的言説においてさえ非常にネガティブな,扱いにくく,確固たる「輪郭」をもたないものとされてきました。「うつ病は治らない」,であるとか「怠惰」など「個人の資質に帰せられる」といった言説が,医師の側からも発せられていたのは事実です。逆にいえば,このように社会全体が「うつ病」に「神秘性」を付与したことは,患者さん自らが「うつ病」を逆手にとり,自身を「特別な心の弱者」として,殻に閉じ込もってしまうような事態をも引き起こしていたといって過言ではないでしょう。

今この現在において,即ち本稿で問題とされるうつ病は,一昔前の「うつ病」とは異なるもの,延いては名称を変えたほうがよいもの,と筆者は考えます。というのは,普段の社会生活を営むうえで,誰しもが避けられない,「心と体の総合的な失調」が件のうつ病だからです。「うつ病は心の風邪」ともいわれますが,うつ病は,誰もが発症する可能性を秘め,また処置の仕様が確立されている病気なのです。今や,このうつ病は,医学の領域において事細かに「輪郭」が与えられている一途にあります。その一方で,社会的なケアという面では,制度的な枠組みが未だ整っていないというのが現状です。この社会的な受け皿を構築するにあたって必要とされるのは,何よりもまず,うつ病に対する社会的認識の改善です。このことを切に感じ,筆を執った次第です。

本文では,具体的にまず第I節で,うつ病発症の契機となりうるような症状の事例を挙げてまいります。続く第II節では,第I節の事例に即して,医学的に定義されたうつ病の「輪郭」を明示します。近年耳にする「うつ病は治る」という言説はいささか誤謬はあるものの,風邪から糖尿病などにいたるまでの病気と同じように,要は病状の程度に応じて処置の難易如何があるということが明らかになるでしょう。第III節では,実際の治療にあたって,診断から治癒までの経過を,患者さん及び,周囲の方々への注意点とともに整理します。第IV節で問題となるのは,うつ病を巡る医療・社会制度の実態です。家族のために,大切な人のために,うつ病患者さんが積極的に医療を受けることができるような受け皿の拡充が,今後の課題として立ち現れてくるでしょう。この課題を達成するうえで不可欠なのは,何よりも社会全体がうつ病に対して無知であってはならないということです。そこで第V節では,うつ病の社会的認知の促進に向けて,同病(に対する認識)の歴史的背景を探ることとします。

なお,【強迫性障害】は,うつ病とは異なる病気です。こちらについても,うつ病と同様の社会的な対応が迫られている領域ですが,本稿で扱うには紙幅の限界がありますので,言及するには至りません。ただし,今やインターネット上でも多くの情報が蓄積されていますので,是非ご覧頂きたいと思います。


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