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最新記事【2009年03月10日】

前項でも申し上げたとおり,各種の抗うつ剤は,一貫して医師の指示をよく守って服用することが求められます。【四環系抗うつ剤】は,比較的即効性があるとはいえ,【抗うつ剤】は,効果を発揮するのに服用してからおおよそ数週間の時間を要します。また,従来用いられてきた【三環系】を中心とする抗うつ剤は,【セロトニン】や【ノル-アドレナリン】以外の物質にも働きかけるので,口の渇き,眠気,便秘,排尿不全などの副作用を伴うことがあります。

その一方で,焦って過度に服用することは,却って脳内の神経機能のバランス,延いては心と体のバランスに多大な負担をかけることにもなりかねません。このことを肝に銘じて頂いて,さらに【抗うつ剤】の悪用がどのような結果を招くのかについても言及しておきましょう。

例えば,【三環系抗うつ剤】。一度に多量を服用すると,急性中毒に陥る可能性が非常に高くなります。自殺に用いられるのもよく聞かれるところです。また,悪用によって廃人と化してしまうケースや,犯罪性との相関も指摘されるところです。

ですから,ほんとうに真剣にうつ病を治したい,大切な人のために早くよくなりたいと思うならば,医師との綿密なコミュニケーションが図られて然るべきです。

さて,うつ病の治療に用いられるお薬を紹介してまいりますが,そもそもどのような作用が念頭におかれているのでしょうか。

うつ病の治療に一般的に用いられているのは,【抗うつ剤】と呼ばれるものです。[II. 7]及び,[II. 8]において,脳内の神経伝達物質の機能について理解を深めました。具体的には,【セロトニン】と【ノル-アドレナリン】が意欲などの精神活動を脳が命令するうえで,重要な役割を果たすということでした。この神経伝達物質の分泌量を調整してやるのが【抗うつ剤】の働きなのです。実際に服用すると,抑うつ感が改善されます。ただし,この作用は一時的なものですから,やはり性格改善など【日常的なケア】も並行して行っていかなければならないところです。

件の【抗うつ剤】にも様々な種類が用意されています。まずは,表に分類しましょう。

【三環系抗うつ剤】…アミトリプチリン
          アモキサピン
          イミプラミン
          クロミプラミン
          ドスレピン
          トリミプラミン
          ノルトリプチリン
          ロフェプラミン

【四環系抗うつ剤】…セチプチリン
          マプロチリン
          ミアンセリン

【その他抗うつ剤】…スルピリド
          トラソドン

     【SSRI】…パロキセチン
          フルポキサミン

     【SNRI】…ミルナシプラン

【三環系抗うつ剤】とは,分子内に三つの環をもつ薬剤です。同様に【四環系】は,分子内に四つの環をもっています。さらに,それぞれの構造上の違いから,各種カタカナの名称が用いられているわけです。【三環系】の薬剤は,神経の【終末】部位において,【セロトニン】及び,【ノル-アドレナリン】の【再取り込み】を抑止する方向へ働きます。即ち,これらの神経伝達物質がスムーズに受容体に取り込まれ,「意欲」がよりよく伝えられるように働くという仕組みになっているのです。ただし,この抗うつ剤は,うつ病にかかわる組織のみに作用するわけではないので,副作用の懸念が指摘されるところです。【四環系】は,他と比べて即効性が期待できる作用を有します。服用から四日で効果が現れるとされています。また,副作用も比較的少ないといわれています。

【SSRI】は,比較的近年に開発された薬剤で,【選択的セロトニン再取り込み阻害薬】のことで,【Selective Setoronin Reuptake Inhibitors】の略語です。こちらも理屈としては同様に,【セロトニン】が受容体に達する前に,【シナプス】で【再取り込み】がなされないように働く薬剤です。【SNRI】は,【セロトニン・ノル-アドレナリン再取り込み阻害薬】のことで,【Serotonin and Norepinephrine Reuptake Inhibitors】の略です。こちらは,【SSRI】に続く「次世代抗うつ剤」とも呼ばれており,【セロトニン】のみならず【ノル-アドレナリン】の【再取り込み】をも抑止する働きをもっています。また,【SSRI】及び,【SNRI】は,前段落に挙げた【環系】の抗うつ剤よりも副作用が少ないとされています。

これらの薬剤は医師の指示通りに適切に服用することは,いうまでもありません。使い方によっては,とんでもない結果を生み出すことにもなりかねません。項を改めましょう。

うつ病の診断が下された患者さんは,治療に向けてどのような策が講じられるのでしょうか。基本的な処置は,【薬物療法】となります。最近では,身近な同僚や仲間にもお薬を服用している方がいるのをよく見かけるようになりましたね。

うつ病は,程度にもよりますが,体と心の総合的な病気ともいえますので,完治を急ぐことはできません。却って身体に負担をかけることにもなりかねませんから。加えて【薬物療法】のみで適切な処置が行えるような病気でもないことに注意が必要です。

【薬物療法】と同じくらいの治療のウェイトを占めるのが【休養】です。心と体に負担がかからないようゆっくりと休息をとることが必要です。この過程においては,患者さん本人が性格改善などの【日常的なケア】を心がけることも求められてきます。さらに,絶対不可欠なのが,【コミュニケーション】です。何よりもまず大切なのは,担当のお医者さんと絶えず病状の経過や対策について話し合うことです。加えて,問診時と同様,家族や親密な間柄にある人をも交えてコミュニケーションを図ることが功を奏する場合も十分に考えられます。

やはりうつ病の程度にもよりますが,回復に向けてのタイムスパンは,半年から一年の間といわれています。ですから,ある意味【漢方】と同じように,心と体に負担をかけないように,じっくり焦らず快方の時を待つことが求められるのがうつ病の治療です。次項では,具体的にうつ病の【薬物療法】で用いられる薬剤についてお話を進めましょう。

うつ病…怖くない病気です

[はじめに]

この度は,【うつ病】をテーマにお話をします。みなさまは,【うつ病】,と聞いてどのようなイメージを抱かれるでしょうか。何か奇異なもの,延いては社会生活にそぐわないものとお考えの方も多いのではないでしょうか。確かに一昔前までは,「うつ病」は,医学的言説においてさえ非常にネガティブな,扱いにくく,確固たる「輪郭」をもたないものとされてきました。「うつ病は治らない」,であるとか「怠惰」など「個人の資質に帰せられる」といった言説が,医師の側からも発せられていたのは事実です。逆にいえば,このように社会全体が「うつ病」に「神秘性」を付与したことは,患者さん自らが「うつ病」を逆手にとり,自身を「特別な心の弱者」として,殻に閉じ込もってしまうような事態をも引き起こしていたといって過言ではないでしょう。

今この現在において,即ち本稿で問題とされるうつ病は,一昔前の「うつ病」とは異なるもの,延いては名称を変えたほうがよいもの,と筆者は考えます。というのは,普段の社会生活を営むうえで,誰しもが避けられない,「心と体の総合的な失調」が件のうつ病だからです。「うつ病は心の風邪」ともいわれますが,うつ病は,誰もが発症する可能性を秘め,また処置の仕様が確立されている病気なのです。今や,このうつ病は,医学の領域において事細かに「輪郭」が与えられている一途にあります。その一方で,社会的なケアという面では,制度的な枠組みが未だ整っていないというのが現状です。この社会的な受け皿を構築するにあたって必要とされるのは,何よりもまず,うつ病に対する社会的認識の改善です。このことを切に感じ,筆を執った次第です。

本文では,具体的にまず第I節で,うつ病発症の契機となりうるような症状の事例を挙げてまいります。続く第II節では,第I節の事例に即して,医学的に定義されたうつ病の「輪郭」を明示します。近年耳にする「うつ病は治る」という言説はいささか誤謬はあるものの,風邪から糖尿病などにいたるまでの病気と同じように,要は病状の程度に応じて処置の難易如何があるということが明らかになるでしょう。第III節では,実際の治療にあたって,診断から治癒までの経過を,患者さん及び,周囲の方々への注意点とともに整理します。第IV節で問題となるのは,うつ病を巡る医療・社会制度の実態です。家族のために,大切な人のために,うつ病患者さんが積極的に医療を受けることができるような受け皿の拡充が,今後の課題として立ち現れてくるでしょう。この課題を達成するうえで不可欠なのは,何よりも社会全体がうつ病に対して無知であってはならないということです。そこで第V節では,うつ病の社会的認知の促進に向けて,同病(に対する認識)の歴史的背景を探ることとします。

なお,【強迫性障害】は,うつ病とは異なる病気です。こちらについても,うつ病と同様の社会的な対応が迫られている領域ですが,本稿で扱うには紙幅の限界がありますので,言及するには至りません。ただし,今やインターネット上でも多くの情報が蓄積されていますので,是非ご覧頂きたいと思います。


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