[V. 2] うつ病に関する数値的把握(1)…実数と暗数
うつ病患者さんが今どれくらいいるのか,またどれくらい増えてきたのか,についてハッキリとした数値は出せないところです。したがって,断片的なデータに基づいて,うつ病の量的把握を試みましょう。
とある報告では,わが国において近年,以下のような状況が見出されるとのことです。
イ…うつ病の発症率はおよそ4%。即ち25人に一人の割合。
ロ…ただし,過去にうつ病歴のある人を含めるとおよそ14~25%。即ち,5~7人に一人の割合。
ハ…うつ病を既往症にもつ人の割合は,男性で7%,女性で19%。なお,アメリカ合衆国の統計では,男性10%,女性25%。
これだけのデータだけからも,二つのことが明らかになりますね。まずひとつめに,発症率自体は比較的低いものの,うつ病歴も考慮すると,発症率が高くなっているということ。このことは,「うつ病になりやすい気質・体質」があるということを表していましょうか。
ふたつめに,うつ病は,男性よりも女性に多く見られるということですね。ここでは,アメリカ合衆国との比較のみに留まりますが,概ね国際的な傾向とみてよいでしょう。このような傾向も加味して医療・福祉サービスが拡充されなければなりませんね。
しかしながら,いまひとつ注意が必要です。これらの数値に用いられる実数は,医療を受けた時点でとられているものです。したがって,暗数,すなわちうつ病に陥っていながらも,病院を訪れていないという人の頭数はここには算入されません。厚生労働省内「地域におけるうつ対策検討会」が平成16年1月に提出した「報告書」においても,「…うつ病の受療状況に特化した全国統計は存在しないし、一方、うつ病の半数以上が医療機関を受診していないと言われ、うつ病の正確な把握は難しいのが現状である」と述べられているとおりです。
さらに,うつ病にかかっているだけでなく,うつ病予備軍(第I節の事例や,[II. 5]の各種症候群をご参照ください。)をも含めると,この暗数は,グラックホールのように実数を呑みこんでしまいかねない規模になると考えられるでしょう。
それでは,少なくとも分かっている実数の領域についてだけでも,歴史的な推移を確認しておきましょう。項を改めます。