[III. 9] うつ病の治療(7)…自分を知る・見つめ直す
うつ病の【薬物療法】と並行して,患者さんご本人が日常的にケアしなければならないのは,【休養】の他にも様々な事柄が挙げられます。【セルフコントロール】ともいうべき領域です。
まずは,【性格・気質の改善】です。うつ病に陥りやすい性格・気質については,[I. 9]で紹介したように,【真面目・勤勉】・【几帳面者・完全主義者】・【自分主義】・【柔軟性の欠如】・【自信の欠如】・【感情表現が不得手】といったキーワードが代表的なものとなります。もちろん,先人が「三つ子の魂百まで」と申したように,うつ病治療において「性格を治す」,というのは誤謬があるかと思われます。ですから,何よりもまず自分の【自分を知る・見つめ直す】ということが求められます。
上記のキーワード群は,一見するとネガティブな「性格・気質」を表したものといえるでしょうが,誰しも歳を重ねるにつれ,若い頃は尖がっていた「性格・気質」に年輪を重ね,老獪に立ち回るようになるものです。その際には,常に自らの性格・気質の自己分析が行われているはずです。同じように考えてみてはいかがでしょうか。加えて,このような「人生の過程」というほどではございませんが,うつ病の治療も比較的長期間を要することを逆手に取って,治療を自らのますますの成長とセットにして,「焦らずじっくり」構えてみるのが何よりである,と筆者は考えます。
そのようにして,患者さんご本人固有の年輪,即ち培われてきた「性格・気質」に少しそぐわない行動を意識的にしていみるというのがよいでしょう。例えば,仕事を多少【いい加減に】済ませてみる,または仕上がりまでの時間に【ゆとり】を持たせる,といったことが挙げられます。それから,やるべきことの【優先順位】を設定するということ。何故か,回避してしまいがちだった大切な仕事から片付けていくのです。加えて,その日のうちに完成しなくても,次の日にまわせばよい,というぐらいの心持でいることが重要です。さらに,問題が生じたときには,【抱え込まない】ことです。このことは,【性格・気質の改善】とも密接に関係してきます。つまり,【自分の限界をよく理解する】ことなのです。独りよがりになって却って,作業の成果や効率を貶めるよりも,他人と情報・課題を共有したほうが,会社・家族にとっても利益を生み出しうることなのですから。
また,【他人の評価を気にしない】ことも大切です。といっても,人の目は誰しも気になるものです。ですから,不必要に憶測のスパイラルに陥らないよう心掛けることが大切です。「他人からの評価を知る」=「自分を知る」ためにも,隣人・同僚・家族とのコミュニケーションは不可欠であるといえましょう。
最後に一点注記しておきたいのが,【生活環境の変化に注意する】ことです。項を改めましょう。