[III. 4] うつ病の治療(2)…薬物療法の概要
さて,うつ病の治療に用いられるお薬を紹介してまいりますが,そもそもどのような作用が念頭におかれているのでしょうか。
うつ病の治療に一般的に用いられているのは,【抗うつ剤】と呼ばれるものです。[II. 7]及び,[II. 8]において,脳内の神経伝達物質の機能について理解を深めました。具体的には,【セロトニン】と【ノル-アドレナリン】が意欲などの精神活動を脳が命令するうえで,重要な役割を果たすということでした。この神経伝達物質の分泌量を調整してやるのが【抗うつ剤】の働きなのです。実際に服用すると,抑うつ感が改善されます。ただし,この作用は一時的なものですから,やはり性格改善など【日常的なケア】も並行して行っていかなければならないところです。
件の【抗うつ剤】にも様々な種類が用意されています。まずは,表に分類しましょう。
【三環系抗うつ剤】…アミトリプチリン
アモキサピン
イミプラミン
クロミプラミン
ドスレピン
トリミプラミン
ノルトリプチリン
ロフェプラミン
【四環系抗うつ剤】…セチプチリン
マプロチリン
ミアンセリン
【その他抗うつ剤】…スルピリド
トラソドン
【SSRI】…パロキセチン
フルポキサミン
【SNRI】…ミルナシプラン
【三環系抗うつ剤】とは,分子内に三つの環をもつ薬剤です。同様に【四環系】は,分子内に四つの環をもっています。さらに,それぞれの構造上の違いから,各種カタカナの名称が用いられているわけです。【三環系】の薬剤は,神経の【終末】部位において,【セロトニン】及び,【ノル-アドレナリン】の【再取り込み】を抑止する方向へ働きます。即ち,これらの神経伝達物質がスムーズに受容体に取り込まれ,「意欲」がよりよく伝えられるように働くという仕組みになっているのです。ただし,この抗うつ剤は,うつ病にかかわる組織のみに作用するわけではないので,副作用の懸念が指摘されるところです。【四環系】は,他と比べて即効性が期待できる作用を有します。服用から四日で効果が現れるとされています。また,副作用も比較的少ないといわれています。
【SSRI】は,比較的近年に開発された薬剤で,【選択的セロトニン再取り込み阻害薬】のことで,【Selective Setoronin Reuptake Inhibitors】の略語です。こちらも理屈としては同様に,【セロトニン】が受容体に達する前に,【シナプス】で【再取り込み】がなされないように働く薬剤です。【SNRI】は,【セロトニン・ノル-アドレナリン再取り込み阻害薬】のことで,【Serotonin and Norepinephrine Reuptake Inhibitors】の略です。こちらは,【SSRI】に続く「次世代抗うつ剤」とも呼ばれており,【セロトニン】のみならず【ノル-アドレナリン】の【再取り込み】をも抑止する働きをもっています。また,【SSRI】及び,【SNRI】は,前段落に挙げた【環系】の抗うつ剤よりも副作用が少ないとされています。
これらの薬剤は医師の指示通りに適切に服用することは,いうまでもありません。使い方によっては,とんでもない結果を生み出すことにもなりかねません。項を改めましょう。