[II. 8] うつ病発症のメカニズム(2)…セロトニンとノルアドレナリン
それでは,もう少し詳しくうつ病発症のメカニズムをみてみましょう。上に挙げたような肉体・精神への命令系統は,【神経】によって構成されています。その信号は電流として流されるわけですが,この信号は【神経伝達物質】や【ホルモン】によって仲介され送られているのです。
【神経伝達物質】とは,「神経終末から放出され,次の細胞を興奮させ,または抑制して情報を伝達する化学物質。アセチルコリン・アドレナリン・アミノ酸・ペプチドなど」『広辞苑第五版』のことです。【ホルモン】とは,「内分泌腺など特定の組織または器官から分泌され,体液と共に体内を循環し,特定の組織の機能にかわめて微量で一定の変化を与える物質の総称。脳下垂体ホルモン,甲状腺ホルモン,性ホルモン,昆虫の変態ホルモンなど」『同上』のことです。
さて,前項で挙げた「精神的活動」を脳が命令するうえで,一役買うのが【セロトニン】と【ノルアドレナリン】です。【セロトニン】とは,「化学名5-ヒドロキシ-トリプタミン。生理活性アミンの一種で,脳・脾臓・胃腸・血小板に多く含まれ,平滑筋の収縮,血管収縮,止血,脳における神経伝達,松果体でのメラトニン合成などに作用し,また脳の活動をたかめるといわれている。トリプトファンから合成される」『同上』です。【ノルアドレナリン】とは,「哺乳類の交感神経の末端から分泌される物質で,化学的にはアミンの一種。交感神経の支配を受けている細胞に神経刺激を伝達する働きをもつ,代表的な神経伝達物質。ノル-エピネフリン」『同上』のことです。
この【セロトニン】と【ノルアドレナリン】が脳内の【神経細胞】において放出されると,【受容体】と結合して信号が伝達されるという仕組みになっているのです。したがって,【セロトニン】と【ノルアドレナリン】の分泌量(濃度)が低減すると,私たちの意識においては,意欲がわかない,即ち抑うつ感となって現れてくるのです。ただし,これらの物質の分泌が低減する理由については,未だ解明されていないところも多くあります。
以上がうつ病発症のメカニズムです。次節以降では,具体的なうつ病の治療方法,ケアの仕方,さらにうつ病をめぐる医療制度についてみていきましょう。