[II. 4-b] 大うつ病性障害(大うつ病性エピソード)
以上が【DSM-IV】による【大うつ病性障害】(大うつ病性エピソード)の診断基準です。これはあくまで「診断」の利便性を考えたものといえましょうか。つまり,医者の能力・経験を問わず,まずは症状をデータ化できるということです。国際的に【DSM-IV】が用いられている所以です。ただし,実際の治療の段階においては,患者さんを取り囲む生活環境・家族・社会や,患者さんの来歴をもふまえる必要がありましょう。この点は,ある種「カウンセリング」といってもよいところで,「カウンセラー」の経験と能力,延いては人間性が問われるところとなるといえばよいでしょう。
前項から本項にかけては,医学的なうつ病の診断基準を整理しました。第I節の事例からいきなりここに飛んでいらした方は,ちょっと面食らったかもしれませんね。ただし,このように症状が医学的にも体系化されているからこそ,対処の道が開けているということなのです。本稿の結論を急ぐようで恐縮ですが,糖尿の定期診断のように,延いては心と体の総合的な定期診断のために,病院の精神科やメンタルクリニックに赴くことは,最早奇異なことではなく,むしろ自らのため,さらには大切な人のためにも講じられて然るべきことなのです。
逆にいえば,紹介した事例をみてもわかるように,うつ病の症状はごく日常的なものあり,決して奇異なものではないことは自明ですね。「いくらでも寝てしまう…」などはむしろ,普段の笑い話の種にさえなっていることでしょう。ですから,いまやうつ病とは,昔の「うつ病」と全く異なる,むしろ病名を変えるべきものとして捉えるべきものなのです。つまるところ,うつ病は,はっきりとした「輪郭」をもち,ごく当たり前の生活で生じうると気楽に考えればよいのです。そして,処置は可能である,と。ところで,上記の医学的な判断基準とはまた別に,事例に応じて社会的に通用している症状の呼称があるようです。大変興味深いので,項を改めてぜひみてみましょう。